tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

国際競争力への誤解

2010年06月16日 11時02分49秒 | 経済
国際競争力への誤解
 正確には、「国際競争力と経常黒字」との関係といったほうが良いのかも知れませんが、ここでの命題は、「日本のように、万年経常黒字の国は、国際競争力が強すぎるからだ。」という世界中に蔓延している誤解を検証することです。

 さらにその上に言えば、現在の中国について言われるように、「巨大な貿易黒字を積み上げているのは国際競争力が強すぎるのだから、人民元は切り上げて当然である。」といった主張は、経済理論としても、現実の経済を理解する上でも、必ずしも正しいものではないという 事を理解してもらうためです。

 経常収支や貿易収支が黒字になったり、赤字になったりするのにはいろいろな原因があります。にも拘らず、多くの国の政治家や経済学者は、「黒字イコール国際競争力」だから「対抗策は通貨の切り上げ」と極めて短絡的に考えてしまう傾向が強いように感じられます。

 しかし、どうでしょうか、イソップの寓話ではありませんが、例えば、人間の中にも「アリ型」の人間と「キリギリス型」の人間がいるのではないでしょうか。社会にもアリ型とキリギリス型があり、国にもアリ型とキリギリス型があるという事は考えられます。
 例えばギリシャやアメリカは、典型的なキリギリス型でしょう。

 同じ人間でも、若くて働き盛り、将来を考えて堅実な生活をしている時期はアリ型で、その時期を過ぎて、後はゆっくり人生を楽しもうという時期にはキリギリス型になるかも知れません。 アメリカも第二次大戦後、1960年代までは経常黒字国でした。
 もちろん性格的に、もともとアリ型の人やキリギリス型の人もいることも考えられます。

 ところで、「アリ型」と「キリギリス型」をどう区分するかですが、それは次のようです、
   アリ型: 稼ぎの範囲で生活し、貯蓄を残す
   キリギリス型: 稼いだ以上に遣い、借金を残す

 経済学上は、「アリ型」の国は経常黒字の国、「キリギリス型」の国は、経常赤字の国となります(下段の注参照)。という事になりますと、経常黒字の国が「国際競争力が強く」、経常赤字の国は「国際競争力が弱い」というわけではなく、単にライフスタイル、生活習慣上の違いという事になります。

 そして現実に起こっていることは、「アリ型」の国の貯蓄を「キリギリス型」の国が借りて使ってしまっているという事態です。使ってしまった借金は簡単には返せません。
 今、国際競争力という形で論じられている問題は、こんなことのようです。 円や人民元の切り上げで解決できるのでしょうか。 本当に必要なのは生活スタイルの見直しなのでは・・・。

(注)  GDP=消費+貯蓄+税金等   (収入の分配面)
     GDP=消費+投資+政府支出+輸出-輸入  (支出面)
              消費+貯蓄+税金等=消費+投資+政府支出+輸出-輸入
     両辺から消費を引いて、投資と政府支出を左辺に移項すると
         貯蓄-投資+税金等-政府支出 = 輸出-輸入
         (過剰貯蓄)      (財政赤字)    (万年黒字)
 つまり、消費でも投資でも財政赤字でも使い切れないGDPが国際収支の黒字になります。


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